学校で居残りで作業していた。
このイラストレーターのファイルを完成させねばいけないというのに。しかし、同級の高橋君が作業の妨害をしてくる。妙にイライラしていた僕は机を強く叩いた。するとまるで漫画の様にひしゃげた。高橋君との間に気まずい雰囲気が漂う。
一緒に帰る予定の丹羽君が待っている。今日は諦めてファイルを送信して家でやろう。教室の最後尾にあるPCを立ち上げるとスペランカーの画面になっていた。雰囲気は似ているが、完全な強制横スクロールアクションだ。あのどこに飛んでいるのか分からない銃も健在だが、もう一つの攻撃方法であるトンファーの方が圧倒的に使い勝手が良い。いまいち操作方法が分からぬまま2面で全滅してしまった。僕の後に続いてスペランカーをプレイし始めた高橋君を尻目に丹羽君と教室を後にした。
帰りながら丹羽君はあの僕が破壊した机に入っていた大事な何かに傷が付いてしまったことをしきりに気にしていたが、「俺がやったのだから人に聞かれたら俺のせいにするといい」と当たり前のことをいうとひどく安心した。
丹羽君と別れた僕は、ファンタとドクターペッパーを買うことを強く決めていた。ファンタを買うために自販機に向かうと、値段が1050円だったり、65円だったり、100050mlだったり一定ではないので買うことができない。僕はすでにいない丹羽君に文句を言った。
ドクターペッパーの売っている別の自販機に向かうと、大量の粉のポカリスエットなども売っていて惹かれたが、初志貫徹して65円のドクターペッパーを買った。ジュースの取り出し口には僕の好物のチップス型のカラムーチョが剥き出しで入っていたので人目を盗んで持てるだけ取った。
カラムーチョをかき集めていると、2人の学生の姉妹がベンチに座った父親らしき人物を前に、
「1日2回も使うのに、あなたは買わないつもりですか~?PASMO~♪」
とハモって歌ってPASMOを2枚買うことを要求していた。TVでそんなCMがやっているのだろう。学生にとってPASMOを所有することはステイタスなのだ。
父親は毅然とした態度で、
「じゃあ逆に聞くけれど、PASMOを2枚買ったからといって高校が2つになりますか?」
と言った。「なかなか筋の通ったことを言うものだ」とその時の僕は思った。その後父親は急に態度を軟化させ、
「それより歌が上手いじゃないか、もう一回歌ってくれないか?」
といって姉妹は歌を歌い始めた。僕と近い位置でその光景を見ていた子連れの島田伸介が、
「なんだか誤魔化してるみたいでいやらしいなあ~」
と言った。島田伸介は僕と連れ立って歩き、宮古島の子供たちがどれだけ純粋か、東南アジアの露天商がどれだけ小ズルイかを熱弁していた。僕はというと、その間適当な相槌を打ちながら、自分が裸足で歩いていることを酷く恥じていた。
島田伸介と別れて実家へ付くと、玄関に親戚の従兄弟が自転車で来ていて、ちょうど帰るところだったようだ。何か話しかけられたが、従兄弟の誰だったか、それともその親なのか、そもそも自転車で来れるような親戚はいたかどうか、混乱して生返事しかできなかった。
家に入ってからも自分の部屋がどこか分からず何度か間違えた。一番奥の自分の部屋に入ると、400字詰め原稿用紙とイギリスの王室で起きた事件の新聞の切り抜きが机の上に置いてあった。
そうだった、夏休みの宿題をやらなければいけないのだった。この新聞の内容をネタにして作文を書けということか?昔は読書感想文などの長文は苦手だったが、今はそうでもない。そうだ、さっきの親子の話を書けばいいじゃないか。いや、でもあれは夢の話だから、作文でフィクションは不味いだろう。それでは小説になってしまう。
あれ?さっきのは夢なのか?
・・・というところで目が覚めた。