OSSがなくなるか、少なくとも大きく衰退するのではないかという危機感を持っています。
AIがOSSを不可視化する
生成AIはOSSを利用者から見えなくしていく。
これまでは利用者自身がOSSを探してREADMEを読み、作者やプロジェクトを知ったうえで利用していた。便利だと思えば感謝を伝えたり貢献したりすることもあった。
しかしVibe CodingによってAIが必要なソフトウェアを選び、組み合わせ、改変するようになると、利用者は元になったOSSの名前すら知らなくてよくなる。
OSS自体は使われ続けても、誰がどんな思想で作ったのか、どれほど役に立ったのかは見えなくなる。結果として作者への感謝や評価、支援、貢献も減っていく。
オーダーメイドソフトがOSSを不要にする
- Software Gets Personal: The Makers | by Fabien Girardin | Personal Software | Medium
- Welcome to the personal software revolution | The Verge
生成AIによって一人ひとりの用途や好みに合ったオーダーメイドのソフトウェアを簡単に作れるようになった。
既存のOSSを探して使い方を覚え、自分に合わない部分を我慢するより、最初から自分専用のものを作るほうが早い。
そうなれば多くの人が同じソフトウェアを共有する必要は薄れ、OSSの存在価値も小さくなる。
ソフトウェアは増えるがOSSは減る。
何が困るの?
僕はOSS文化そのものが大好きなので、なくなると非常に困る。
ただ一般の人から見れば「それって困ることなの?」と思うかもしれない。
しかしこれは単に僕が寂しいというだけではなく、社会全体にとっても良くないことだと思う。
共有地の悲劇
一人ひとりにとってはOSSを探して使うより、AIで自分専用のソフトウェアを作るほうが早くて便利かもしれない。
しかしみんながその選択をすると、改善やバグ修正、設計上の知見が共有されなくなる。社会全体で同じものを何度も作ることになり、品質を共同で検証できる共通基盤も育たない。ソフトウェア技術の蓄積も弱くなる。
一人ひとりにとって合理的な選択でも、その積み重ねによって誰もが利用できる共有資産が失われていく。
これがAI時代のOSSにおける「共有地の悲劇」ではないだろうか。
悲劇を避けるには
共有地の悲劇に対しては、利用者の善意だけに頼るのではなく、資源を守るための仕組みを作るのが一般的だ。
たとえば漁場なら漁業組合や政府が魚を捕ってよい時期や量を決める。利用者同士でルールを作って監視し、ときには違反に罰則を設ける。
漁場から利益を得る人が、その維持にも責任を持つようにする。
どうすればいいのか
OSSでも同じような考え方が必要になるのかもしれない。
AIや企業がOSSから大きな利益を得るなら、その一部がOSSの維持に戻る仕組みを作る。AIがどのOSSを利用したのか分かるようにする。企業や政府、業界団体が基金を作り、共有資産として支える。AIによって生まれた改善を、元のOSSへ戻しやすくする仕組みや標準を用意する。
もちろん漁場とOSSは同じではない。魚は捕れば減るが、ソフトウェアはコピーしても減らない。
減っていくのは作る人の意欲や改善を共有する習慣、コミュニティの活力だ。
それでも共有地を利用する人が、その維持にも参加する仕組みを作るという考え方は参考になる。
AI時代のOSSにも、漁業組合のように共有資産を共同で守る新しい制度や運動が必要になるのかもしれない。
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